2027年度から、情報処理技術者試験は制度の見直しが予定されています。その中で、新たに設けられるのが「データマネジメント試験(仮称)」です。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が新設を検討している国家試験で、ITパスポート試験の次のステップとして位置づけられています。データやAIを業務に活かすための基本的な知識と技能を評価する試験として、ビジネス部門の担当者にも関係する内容です。
この記事では、まずIPAの公表情報を整理し、その後、企業向けAI・DX研修や伴走支援に携わる立場から、実務における情報管理と活用についての考え方を紹介します。
データマネジメント試験とは?
データマネジメント試験(仮称)は、データやAIを効果的・効率的に利活用するための、データマネジメントの基本的な知識と技能を評価する国家試験です。IPAは、主に企業のビジネス部門を想定し、データの整備・管理に関するスキルを身につけるための試験として新設を予定しています。
現時点で公表されている試験概要
| 試験名称 | データマネジメント試験(仮称) |
|---|---|
| 開始予定 | 2027年度 夏頃~秋頃 |
| 実施方式 | CBT方式(コンピュータを利用した試験) |
| 試験時間 | 科目A・科目Bの合計120分 |
| 出題数 | 科目A:48問/科目B:12問 |
| 位置づけ | ITパスポート試験の次のステップ |
※2026年11月6日時点で公表されている検討内容です。名称・実施時期・詳細は変更される可能性があります。出典:IPA「情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の見直しの検討状況について」。

なぜ今、データマネジメントが重要なのか?
企業では、売上や顧客情報の分析、部署間での情報共有、業務改善など、さまざまな場面でデータの活用が進んでいます。さらに、生成AIの普及によって、これまで以上に多様な情報を業務に利用できるようになりました。
一方で、データの品質や管理方法に問題があると、十分な成果につながらない場合があります。
例えば、Excelで管理している顧客情報や売上データでは、同じ顧客の重複登録、部署ごとの表記の違い、空欄、更新漏れなどが起こり得ます。こうした状態のまま集計すると、集計漏れや二重計上が発生し、分析結果や業務上の判断にも影響します。
データマネジメントでは、データを適切に収集・整理し、正確性や品質を維持するとともに、利用目的や機密性に応じたアクセス権限、更新方法、管理ルールを整えます。こうした管理は、データを継続的に活用するうえでも重要です。

ITパスポート試験とは何が違う?
ITパスポート試験は、経営・IT技術・情報セキュリティなど、ビジネスに必要なITの基礎知識を幅広く扱います。一方、データマネジメント試験(仮称)は、データの整備・管理を中心に、業務での活用や改善に関係する知識・技能を評価します。
| 比較項目 | ITパスポート試験 | データマネジメント試験(仮称) |
|---|---|---|
| 対象となる知識 | IT・経営・セキュリティの基礎など | データの整備・管理・活用など |
| 学習の方向性 | IT全般の理解 | データを適切に扱い、業務に活かす力 |
| 位置づけ | デジタルリテラシーの基礎 | ITパスポートの次のステップ |
なお、ITパスポート試験への合格は、データマネジメント試験を受験するための必須条件として示されているものではありません。また、2027年度からのITパスポート試験でもデータマネジメントに関係する基礎的な内容が追加される予定です。
どのような問題が出題される?
IPAは、新試験制度のシラバス案と科目A・科目Bのサンプル問題を公開しています。出題範囲等の改定案では、科目Aを知識、科目Bを技能の評価とする構成が示されています。
科目A:知識に関する問題
データの定義、品質、管理、活用、AI利用時の留意事項など、データマネジメントに関わる知識が対象となります。詳細な学習範囲はIPAが公開するシラバス案で確認できます。
科目B:業務での判断や活用に関する問題
出題範囲案では、データの適切な取扱い、分析による意思決定、取組結果の検証と改善、データ活用を促進する環境づくりなどが示されています。
- データ品質や整合性の確認と、問題がある場合の対応
- 目的に合ったデータの選定と分析結果の活用
- 実施した取組の結果を検証し、改善につなげること
- データ活用に関する経験や教訓の共有、組織的な活用の促進
※これらはIPAの出題範囲案を分かりやすく整理したもので、個別の出題内容を保証するものではありません。
どのような人におすすめ?
この試験は、IT部門の専門担当者だけでなく、日常的にデータを扱うビジネス部門の担当者にも関係する内容です。
- ITパスポート取得者:IT全般の基礎知識から、データ管理・活用へ学習を広げたい方。
- 事務・営業部門などの担当者:Excel、CSV、顧客情報、売上実績などを扱う方。
- 業務改善・DX推進担当者:部署間のデータ共有や、業務に合わせたデータ活用を検討する方。
- AIを仕事で活用したい方:ツールの操作に加えて、利用するデータの品質や安全な管理を理解したい方。
試験開始に向けて、今からできる準備
学習を始める際には、まずIPAのシラバス案で必要な知識・技能の範囲を確認し、サンプル問題で出題のイメージを把握するとよいでしょう。
ExcelやCSVのデータを扱う業務であれば、入力形式の統一、欠損・重複の確認、更新担当や権限の整理など、身近な管理方法を振り返ることも知識の理解に役立ちます。
執筆者の視点・実務に関する考察
企業のAI・DX活用を促進するために
ここからは、IPAが公表する出題範囲の説明ではなく、企業向けのAI・DX研修や伴走支援に携わる立場からの私自身の考えです。
私が企業のAI・DX活用で重視しているのは、新しいツールの導入や操作方法の習得だけでなく、企業が持つ情報や知識を安全に管理し、組織全体で活用できる環境を整えることです。
顧客情報や売上データはもちろん、業務手順書、過去の対応記録、担当者が経験を通じて身につけたノウハウも、企業にとって重要な情報資産です。こうした情報が分散していたり、特定の担当者しか把握していなかったりすると、組織全体で活用することが難しくなります。
情報を安全に管理する仕組み
情報の正確性と品質を確保し、アクセス権限、更新方法、利用ルールを整えること。
情報を活用しやすくする仕組み
部署間の情報共有、検索しやすい整理方法、業務手順やノウハウの蓄積と継続的な運用を進めること。
特に、担当者の経験や判断のコツといった暗黙知を、可能な範囲で文書化して社内ナレッジとして共有することは、属人化の軽減や業務の引き継ぎにも役立ちます。さらに、適切に整備された情報は、生成AIによる社内情報の検索や業務支援などにも活かせます。
AIを利用できる人を増やすことに加え、企業が持つ情報を組織全体で継続して活用できるようにすることが、今後のAI・DX推進に必要だと考えています。
今回の試験は、こうした取り組みに関係するデータ管理・活用の基本を整理する機会になると期待しています。ただし、暗黙知の文書化や社内AIシステムの構築を、この試験の独立した主要出題項目だと説明するものではありません。
静岡キャリアアップスクールでの講座開設について
こうした考えから、静岡キャリアアップスクールでもデータの管理と活用に関する知識を身につける機会を提供したいと考え、2027年1月から「データマネジメント試験(仮称)」の試験対策講座を開設する予定です。 講座の内容や募集開始については、決まり次第、当サイトでお知らせします。
参考情報・出典
試験情報は2026年11月6日時点で確認できる公表資料に基づいています。最新情報はIPAの公式サイトでご確認ください。図2および執筆者の考察はIPAの公式見解を示すものではありません。
